私のことを直接知る人はおそらく信じてくれないと思いますが(笑)、私は昔から結構「自分はもしや根は内向的な人間なんじゃないか」と思ってたんですよ。
自分の興味あることに関してはよく喋るし、行動的だし、そんなに物怖じせずに初めて会った人にも話しかけることができるので、社交的な人間だと思われてるんだろうなと思うし、自分でも社交的な面があることは認識してるのですが、それ以外のことに関しては実はものすごく引きこもりな傾向もありまして。
大勢の人の前で喋るのは今でもめちゃくちゃ苦手だし、一人で過ごす時間はどれだけあっても全く苦痛じゃないけど、パーティーみたいな賑やかな場所で大勢の人に囲まれてると今すぐ家に帰ってソファーで本を読んでいたくなるし、一日中他人に囲まれてる仕事場ではお昼休みは基本一人で静かにお昼を食べたいし、一人の時間が欲しくて職場や学校のトイレにしょっちゅう籠ってたし、集団行動も苦手で修学旅行では四六時中他人といることに疲れてその後1週間くらいろくに食事できなかったりとか。
パーティースクールと名高いビジネススクールのINSEADでの1年間は、そういう意味では私には地獄のようなところでした(苦笑)
たぶん生徒の80%くらいはハイパーアウトゴーイングで、とにかくよく喋るし体力有り余ってるような人たち。毎日のようになにかしらパーティーやイベントがあって、一学年に500人(2学年合わせると1000人!)いる生徒も複数のキャンパスを行ったり来たりしてるので、イベントに行くたびに常に「初めまして」な人に囲まれる環境。課題のほとんどがグループワークなので、複雑な課題に対して熟考してる暇もなくどんどん進んでいく議論に圧倒されるし、即興でもまるで準備してきたみたいに朗々と論理的にしゃべれる人たちばかり。
そんな環境で、自分に対して「どうして彼らみたいににふるまえないのか」といつも苛立っていました。単にスキルがないだけだろうと、コミュニケーションスキルの講座を片っ端からとったり、色んな場でのプレゼンや発言を自分に課してきたけど、「嫌々やっている」という苦痛感は変わらず、嫌々やってるのでなかなか上達もしない。
苦手なことに気を取られてるので、得意なはずのペーパーテストも散々な結果になったりして、そういう意味ではかなり精神的に打ちのめされた1年間でした。
けど、そうは言っても比較的物静かなタイプの人たちも少しはいるので、結局仲良くなったり、一緒に課題をして成果が出せるのはそういう人たちなんだな、という発見もあって。(INSEADで知り合った今の旦那さんもそっち側のタイプで、授業中発言してるところをほとんど見たことがない。)
こうした経験があったので、スーザン・ケインの「内向型人間の時代(原題:Quiet)」という本を見つけた時、直感的に「この本は私のための本だ」と思ったんですよね(反論は受け付けません(笑))
そして読んでみた結果、私がもともと持っていた「世間では社交的・外向的と思われていても本当は内向的、なんてことはありえるのだろうか」とか「実は内向的、なんていうのは自分を甘やかしているだけで、より積極的にふるまうための努力が足りないだけではないのか」といった漠然とした疑問は、「Hyper Sensitive Person(とっても敏感な人)」という概念で見事に説明されることに驚くばかり。
この概念をものすごくざっくり紹介すると、「約20パーセントの赤ちゃんは、他の子よりも外部からの刺激に敏感に反応する傾向が生まれながらにあり、彼らの多くは成長するに従って内向的な性質を持つようになる。これは、外部からの刺激に敏感に反応する神経を持っているので、物静かに過ごす時間がその他の子供よりも必要になる」という概念。逆に、赤ちゃん時代に外部からの刺激にあまり反応しない子供は成長に従って外向的な性質を持つ傾向があることもわかって来ているとのこと。
もちろん成長するに従って、生まれながらの気質以外の要素で最終的な内向性、外向性は決まるので、生まれが全てではないんだけど、「hyper sensitive」という概念は私にとってものすごく腑に落ちたんですよ。なぜかと言うと、幼い頃から母親に「あなたには「ちょうどいい」という感覚がなかった。ちょっと暑かったり寒かったり痛かったりお腹が空いたりすると、この世の終わりのように不快がる子供だったから、ものすごく育てにくかった」と。実は未だにその傾向はあって旦那さんには迷惑かけまくりなんだけど(笑)、私は単に人よりも我慢強さが足りないだけだと思ってたし、いつもそうやって怒られてきたのでそれが自己肯定感を下げてる要因でもあったんですよ。
けど、こうやって「生まれながらの気質でそうなんだ」と言われると、「そうか、私が単に忍耐が足りないだけではなく、そういう風に生まれたんだから仕方ないな」って初めて自分を許せるという癒しに似た効果がありました。その上で「じゃあそれをどうやって乗り越えたらいいかな」って改めて前向きに捉えられたりとか。
更に、この本で紹介されてる研究結果によると、このhyper sensitivityの傾向を持った人は、ある状況下では、外部からの刺激が強い状況(社交の場だったり、大観衆の前でのスピーチだったり)に耐えられる、もしくは積極的に出ていける特性もあるということがわかってきているらしい。
その状況とは「自分の興味・関心の対象」に関すること。
これも、上述した私の実感とどんぴしゃりで。自分が好きなことなら、いくらでも社交的になれる。けどそれ以外の時は人が変わったみたいに緊張しいだったり1人になりたがったり。これも、私の我慢や努力が足りないだけだとずっと思ってきたけど、「そういう性質なんだ」と定義されると、「それを無理に治そうとするより、興味あることに注力してそこで頑張ればいいんだ」って前向きになれたりとか。
この本は私にとっての人生の指針のような本になると思ったので、日本語訳を電子版で読んだ後で、英語版のペーパーバックも購入しました。いつも手元に置いておく価値があると思ったのと、英語版なら旦那さんも読んで彼自身(彼もおそらく内向型人間)及びパートナーである私への理解も深める大きな助けになると思うので。
このhyper sensitiveな気質を持つ子供やパートナーとどう接したらいいのかに関する具体的な助言や研究結果も豊富に記載してあるので、お子さんやパートナーがそういう性質がありそうな方にもぜひオススメしたい本です。
秋の夜長にぜひ。
おまけ1
上ではINSEADビジネススクールでは嫌な経験ばっかりだったみたいに読めてしまうかもですが、もちろん実際は楽しかったこともめちゃくちゃたくさんあって、要はアップダウンの激しい一年だったってことですね。ちなみに、INSEADでやった性格診断テストでは、私は「外向型(Extravert)と内向型(Intravert)のちょうど中間」でした。
おまけ2
(日本語でもペーパーバック版があるようです)